求められる意識改革

● ワークライフバランスという経営戦略

 看護師がプライベートも充実させながら、健康で豊かな生活ができるようにするために、「ワークライフバランス」の環境を整えることが重要とされています。豊富な経験を持った貴重な人材を確保するために、支援制度や働きやすい環境を整える病院も増えてきました。
 「ワークライフバランス」を整えていくためには、自分自身の働き方や意識改革も大切ですが、やはり職場の組織全体で計画的・体系的に一人一人にあった環境や労働条件を整えていくことが非常に大切になってきます。
 無理な転職・倒れるまで我慢する、そういったことなしに、今まで慣れ親しんだ病院でずっと働くことができたら、病院にとっても、看護師にとってもすばらしい信頼関係と絆がうまれ、それが病院全体のあたたかな雰囲気となってゆくことでしょう。
 魅力的な労働条件、自分自身も大切にしながら働くことができる環境、それらが整うことによって、最終的には病院全体の質の向上、評判の上昇につながっていくわけです。「ワークライフバランスを整えることが病院の経営戦略として最も有効である」とする意識が広まってきています。
 
● 無理な転職で半数が後悔
 
 ボロボロになるまで働いで、「もう限界!」というところまで我慢し、「転職・休職」を選んでしまう方が増加しています。けれども、「転職後、さらに大変になった」「もっとひどい環境で働くことになった」「こんなはずではなかった…」と感じる看護師が約半数だといいます。
 なぜならば、看護師不足は全国で深刻化していて、仲間で退職・求職者が出ても人員補充がなされず、残った看護師にさらに負担がかかっていく悪循環が広がっているからです。全国で広まっている現象ですから、「今より条件良い職場はほんのひと握り」。現在求人がある場所も結局同じくらい、あるいはそれ以上にきつく後悔した…、労働条件は良かったが人間関係で陰湿ないじめがあった…となってしまうわけです。

● ブランクを開けると再就職を諦めてしまう

 また、現在看護師の免許を持ちながら何らかの理由で職場に復帰していない人が55万人いるとされています。子育てや健康状態、メンタルヘルス不全のために一度退職あるいは長期の休職を選んだ方や親の介護を抱えた50代を超えた看護師で「再び現場に戻った看護師」が激減しているからです。
 「数年ブランクを作ってしまうと復帰するのに非常に苦労する」といいます。見たことのない医療器具や薬、進化した看護処置、ブランクのために感じる劣等感、疎外感、「悪意のある腕試し」など、非常に辛いそうです。
 病院側で「長いブランクを作らず、ずっと働いていられる環境整備」に積極的に取り組むことで、看護師が育児・介護・病気など、そういった退職の危機を乗り越えていくことができます。そして、経験豊富な人材を次々と失っていく悪の連鎖を断ち切ることができるでしょう。
 今いる看護師も、その看護師の家族も、ぐるっとかこんで大切にしていく。そういった意識改革が今、病院や施設に求められています。
 
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★ ワークライフバランス 済生会中和病院 
 働きやすい職場づくりの取り組み例
⇒ http://saiseikai-chuwa.jp/kangobu/wlb.html
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▼「大切にするための年代別支援」

● 子育ての支援

・看護師や職員が1歳に満たない子を養育するための休業を保証
・介護関係職員が要介護状態にある家族を介護するための休業を保証
・1歳~3歳の子供の教育をする看護師に対する「短時間勤務制度」を整備
 (可能な時間帯で一日6時間勤務など)
・子供の病気を看護しなければならない場合の有給休暇の保証
 (年間、子供1人につき10日)

● 短時間正職員制度

 「キャリアアップ」「子育て」「介護」などの理由でフルタイム勤務ができない場合、「短時間勤務」でも正職員待遇で勤務可能とする制度です。
 週の勤務時間数を固定し、27時間以上37時間以内の範囲内で就業時間はフレックスタイム。自分自身で勤務時間帯を柔軟に変更できます。短時間正職員の場合は、時間外勤務はありません。